モーションセンサ関連の特許で、任天堂に1010万ドルの賠償金の評決

現地時間9月6日のIncというサイトニュースによりますと、任天堂はWii及びWii Uのコントローラの特許侵害で1010万ドルの賠償金の評決を受けたようです。
https://www.inc.com/will-yakowicz/nintendo-loses-patent-infringement-case-wii.html

テキサスの小さな会社iLifeという会社は、米国特許6,864,796を所有しておりパテント・トロールでもありません。心臓病を患っている患者や老人が倒れたりしないように監視するために使われるボディセンサを開発しているようです。特許の図1に、そのボディセンサの分解図がありますが、ベルト等に留めるクリップ23が描かれています。

請求項1の発明を読みますと、特に医療用のボディセンサとの限定がありませんので、文言上、Wii及びWii Uのコントローラが権利範囲に入ってしまうのかもしれません。記事では、iLifeの特許は、任天堂のコントローラを正しくカバーしているものではないと任天堂は反論しているとのことです。
もちろん、今回の評決は最終的な結論ではないので、約11億円の損害賠償を支払う必要はありません。

再び、ASMLからニコンは損害賠償を得ることができるか

現地時間4月24日付ロイターは、「露光技術に関して、ニコンはAMSL及びカールツァイスに対して特許訴訟を提起」の記事を取り上げています。ニコンはAMSL等をオランダ、ドイツ及び日本で特許訴訟を提起したようです。
http://www.reuters.com/article/us-nikon-asml-idUSKBN17Q0NM

記事によりますと、AMSLは半導体露光装置で9割のシェアを持っているようです。露光技術に関しては、2001年にもニコンがAMSLを特許侵害で訴えて、2004年に和解で決着し、ニコンが約160億円(USD 135M)の和解金を受け取った経緯があります。
AMSLのCEOのコメントですと、「AMSLは何度もニコンとのクロスライセンス契約の延長を交渉してきた。」とあります。
また両社は、米国で調停人(退官した裁判官)の下で交渉協議を行ってきたようですが、合意に至らなかったということです。
このような事実から、ニコンは、クロスライセンスで受け取るライセンス料(売上及び特許件数に基づいてバランスを欠いたライセンス料)に同意できなかったと思われます。

クリックホイール特許 (2)

2013年9月27日のブログにも書きました、個人発明家が、アップル社と携帯型音楽プレーヤー「iPod」の入力インタフェース「クリックホイール」で争っていた事件で、最高裁は双方の上告を退ける決定をしたそうです。

http://www.jiji.com/jc/zc?k=201509/2015091000441&g=soc

東京地裁での判決が2年前の2013年9月でした。3億3千万円強の損害賠償額の個人発明家の勝訴が、そのまま知財高裁及び最高裁でも支持されたということになります。
個人発明家と株式時価総額トップのアップルとの訴訟は、まるでダビデとゴリアテとの闘いです。
でも個人発明家と言えども、以前大手IT企業に勤めていた経験から、特許の知識は豊富だったと思います。

訴訟で使われた特許は、“分割”出願された特許3852854です。その特許の図21に「iPod」の「クリックホイール」に似た図面があります。原出願が「iPod」の販売前で、分割出願が「iPod」の販売後です。

分割出願であるこの特許は、「クリックホイール」を狙い打ちにした発明のようです。特許出願時にはまだ世の中に登場していなかった製品が、数年後に登場することがあります。個人発明家は、出願時の発明を変更して、その対象製品を狙い撃ちにする特許に変更できる知識があったということです。

本ブログ及び特許申請、商標登録出願代行等に関するお問い合わせは、下記URLからお問い合わせください。
http://www.itopto.com/otoiawase.html

今年度の知的財産推進計画

今朝のNHKニュースで、政府が、今月末にも「知的財産推進計画」案を閣議決定することを放映していました。
その放映によりますと、大企業又は大学が保有している「休眠特許」を中小企業が活用できる新たな仕組み、「休眠特許」を地方の中小企業が知的財産を活用できるようにする支援体制を計画に盛り込むようです。

また、特許権の侵害を抑止するとともに被害に遭った企業の救済に充てるため、侵害した企業が支払う損害賠償額を引き上げる方策を検討とのことでした。
この方策については詳細な内容が放映されていませんでしたが、読売新聞の記事では、侵害の有無や損害額の立証責任を侵害者側に負わせるように切り替えて、損害賠償額を引き上げる方策ようです。

特許訴訟の立証責任の大きな転換です。日本の特許訴訟件数は300件/年以下と低迷していますが、この立証責任の転換がなされれば訴訟件数がだいぶ増えるのではないでしょうか。

連邦地裁とITCとの選択

1月26日の日本経済新聞に、セイコーエプソンが、米国や中国等の企業19社に対して、プリンター向けの特許侵害で米国際貿易委員会(ITC)に輸入販売の差し止めを求めた記事が載っていました。
また同新聞に、“米国リーガルABC”のコラムで、米国特許侵害訴訟における連邦地裁と米国際貿易委員会(ITC)との選択に関する記事がありました。このため、本日はITCに関したブログにします。

ITCは、商品等が知的財産を侵害しているが米国内に輸入されることを防ぐことを判断する委員会です。このため損害賠償をITCで争うことはできません。また、特許侵害訴訟では米国特許を有していれば提訴できますが、ITCは、訴訟資格に、技術的及び経済的要件を課しています。

技術的要件は発明に係る製品が米国内で販売されていれば足りますが、経済的要件は米国で投資又は事業をしていることが必要です(第1337条(a)(2),(3))。
米国に支店又は子会社がない企業は、原則、経済的要件を満たさないことになります。
もちろんセイコーエプソンは、米国で大きな事業を有しているからITCに訴えていることができるのです。

クリックホイール特許

東京の個人発明家が、アップル社からて携帯型音楽プレーヤー「iPod」の入力インタフェース「クリックホイール」で東京地裁で勝訴するという記事が9月26日に流れました。日本の特許訴訟は和解で終わることが多いのですが、個人発明家で3億円強の損害賠償額です。でも個人発明家は、賠償額が少ないということで控訴予定とのことです

訴訟で使われた特許は、分割出願された特許3852854号です。その特許の図21に「iPod」の「クリックホイール」に似た図面があります。原出願が「iPod」の販売前で、分割出願が「iPod」の販売後です。分割出願であるこの特許は、「クリックホイール」を狙い打ちにした発明のようです。ちなみに原出願は特許になっていません。特許3852854は、アップル社から無効審判されましたが、特許請求の範囲を訂正して、無効にされませんでした。

出願時には、対象製品がまだ世の中に登場していなかったが、その後対象製品が登場することによって、分割出願などして、その対象製品を狙い撃ちにするように、特許発明を変更することはよくあります。名古屋のベンチャー企業が、2画面特許(折り畳みの携帯電話で、表と裏とに画面がある)でNTTドコモを訴えたことがありました。この特許も、分割出願した特許で、2画面の携帯電話を狙い撃ちにした特許発明にしていました。この事件ではNTTドコモが勝訴しています(東京地裁判決 平成15(ワ)28554)。

訴えると特許が消える

日経BP社 Tech-On!で、本日から6月6日まで、特集で特許関連の記事が毎週掲載されます。

http://techon.jp/article/FEATURE/20130403/274697/?ref=ML

第1回目は、「訴えると特許が消える」という記事です。この記事は日経エレクトロニクス,2010年3月8日号の記事のようです。

「訴えると特許が消える」タイトルからは何のことかわかりにくいですが、原告が特許権を使って特許侵害訴訟をすると、被告から特許無効の反論があり、特許権が無効であると判断されることが多いということが記載されています。記事には、被告側が特許を無効と主張(抗弁)した割合が、2000年に22%だったのが2007年に80%と大幅に増えたデータ、権利者が敗訴した判決のうち特許無効を理由にした割合も,2000年に11%だったのが2007年に63%と増えたデータが載せられています。タイトルどおり、訴訟をすると特許が消える割合が多いです。

私も、特許侵害訴訟を提起し、特許無効を理由に低額の和解で終えた事件を経験したことがあります。記事には無効理由について記載はありませんが、一番悩ましい無効理由が進歩性(特許法第29条第2項)の欠如です。進歩性の欠如とは、文献1と文献2とを組み合わせて容易に発明できた場合には特許にならないという判断基準です。裁判所、特許庁などでも進歩性の判断は微妙な差があり、その微妙な差は、弁理士泣かせです。

ITC (International Trade Commission / 米国国際貿易委員会)

4月22日のニュースで、モトローラ・モビリティーが米アップルを携帯電話センサーの特許権侵害で、米国際貿易委員会(ITC)が、モトローラの特許が有効ではないとの仮決定を支持する最終判断を下したとの記事がありました。米アップルとサムスンもITCで特許権侵害で争っています。ITCは毎日のようにニュースに登場しています。

ITCとは、行政判事室から選ばれた判事が仮決定を行い、輸入品が特許権侵害するならば、委員会が追認する形で米国への輸入を差し止めます。損害賠償は審理されませんが、輸入差止という強力な判断を下すため、米国連邦地裁に提起する特許権侵害訴訟と平行して行われることが多いです。

日本でも、税関の3名の専門委員が意見書を提出し、税関長が多数意見を追認する形で日本への輸入を差し止めます。同様に損害賠償は審理されません。輸入差止という強力な判断を下すため、東京地裁等に提起する特許権侵害訴訟と平行して行われることが多い点も一致します。

ITCも日本税関も同じようですが、ITCは判事が審理し、日本税関は専門委員が審理する点で大きく異なります。専門委員は、弁理士、弁護士及び大学教授の専門委員候補から選ばれますが、民間人であって、裁判官ではありません。私自身も専門委員候補の一名です。事件があり専門委員に選ばれた際には、両当事者に公平な意見を述べるように努めています。

法定損害賠償って何?

TPP(Trans-Pacific Partnership 環太平洋経済協定)の交渉に日本が参加する方針であるため、最近はTPPの新聞記事が毎日のように載っています。その記事の中に、日本は、著作権及び商標権の損害賠償に関して法定損害賠償(Statutory damages)の導入を米国から要求されているとありました。

法定損害賠償について詳しくなかったので調べてみると、著作権は17 USC (United States Code) § 504 (c) 項に、商標権は15 USC § 1117 (c) 項に規定されていました。法定損害賠償制度とは、原告から実損害の有無の証明がなくても、裁判所がペナルティなどを考慮して賠償金額を決めることができる制度です。

商標権に関する法定損害賠償制度は、模造の商標(counterfeit marks)を使ったり、サイバー侵害(Cyberpiracy)の場合にこの制度が使えるようで、たまたま類似する商標を商品につけて販売している場合には適用できないようです。

原告(著作権者、商標権者)は、損害額の立証をする必要がなくなるため、気軽に訴訟できる一方、被告は、利益が吹っ飛ぶぐらいの損害賠償を支払わなくてはならなくなるかもしれません。

「堂島ロール」の店舗が商標権侵害で約5140万円の賠償命令

人気のロールケーキ「堂島ロール」は、旧社名株式会社モンシュシュ(2012年10月1日に、株式会社Mon cher (モンシェール)に社名変更しています。)が店舗名「モンシュシュ:Mon chouchou」で販売していました。フランス語で「私のお気に入り、私の好きな人」という意味だそうです。

ウイスキーボンボンで有名なゴンチャロフ製菓株式会社は、商標第1474596号を有しています。その登録商標は、商標がMONCHOUCHOU\モンシュシュで、指定商品が第30類のパン・菓子です。

ゴンチャロフ製菓株式会社が、株式会社モンシュシュを商標権侵害で訴え、大阪地裁(平成22年(ワ)第4461号)、大阪高裁(平成23年(ネ)第2238号、平成24年(ネ)第293号)でも勝訴しました。平成25年3月7日判決では、その損害賠償額は5,140万円です。

平成23年 第2238号,平成24年 第293号 商標権侵害差止等請求控訴,同附帯控訴事件
(原審・大阪地方裁判所平成22年 第4461号)

旧社名株式会社モンシュシュは、商標モンシュシュ、指定商品第30類のパン・菓子類で商標登録出願していましたが、商標第1474596と類似するという拒絶査定、拒絶審決を受けているようです。旧社名がモンシュシュだったらから、とことん戦う途を取ったのかもしれませんが、商標登録出願の拒絶理由を受けていた時点で、商標が類似することがわかっていたのであるから、会社名・店舗名を変えていれば、訴訟費用・損害賠償額が少なかったでしょう。

損害賠償額を算定する料率は、時期に応じて0.2~0.3%で設定していますが、それでも、5,140万円に昇る損害賠償額になります。本当に「堂島ロール」は売れているのですね。