月別アーカイブ: 2017年10月

「消せるボールペン」特許、消えない業者の摩擦

10月25日付の読売新聞の記事のタイトルの上手さに、思わず唸ってしまいました。このブログのタイトルは、読売新聞のこの記事のタイトルです。記事では、筆記具トップのパイロットと同業界2位の三菱鉛筆とが、消せるボールペンで長く争っていることが書かれています。 http://www.yomiuri.co.jp/national/20171025-OYT1T50149.html パイロットの「フリクション」はもう販売されて10年経つのですね。私も時々使っています。鉛筆の文字は紙に黒鉛の粒子が付いているので、それを消しゴムで削り落とす仕組みです。フリクションは、ボールペンで書いた文字や線を熱でそのインクを無色化するという仕組みです。「フリクション」の販売当初は、どうしてボールペンで描いた文字が消えるのか大変不思議に感じていました。 さて、記事に挙がっているパイロットの「フリクション」の特許は、特許4312987です。この特許に対して三菱鉛筆が無効審判して無効審決が出ました。そして三菱鉛筆は今年1月から「ユニボール アールイー」という商品を販売したようです。 しかし、無効審決に対して知財高裁で争われた結果、今年3月に特許有効と判断され判決が確定したようです。 今度は、パイロットが三菱鉛筆の「ユニボール アールイー」を訴えたということです。本当に、読売新聞の記事のタイトルは言い得て妙です。

IPRにおける補正されたクレイムの特許性は請求人が証明すべき

10月20日の日本経済新聞に、OSG(オーエスジー株式会社)のねじ穴を加工する工具タップの設計データを元社員が不正に持ち出したことで、元社員が不正競争防止法違反(営業秘密の領得)で逮捕されたことが掲載されていました。 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO22463240Z11C17A0CN8000/ 元社員は、中国の競合会社に勤務する中国籍の知人男性にそのデータを渡していたとのことです。元社員は、従業員だったころ、OSGの研究開発部門に在職して製品素材を研究しており、営業秘密が保存されていたサーバーへのアクセス権限があったということです。 OSGはタップで世界シェアNo.1ということですので、競合会社はタップの設計データが喉から手が出るほど欲しかったのでしょう。 OSGのタップに関する特許出願を検索してみますと、数多くヒットします。PCT出願も多く出願していますので、中国でも数多く特許取得しているでしょう。特許公報で公開されていない営業秘密は、タップの材料、熱処理等、製造にかかわる設計データだったのでしょうか。 OSGは内部調査で元社員の不正を発見したようですが、弁理士としてはその内部調査の方法を知りたいです。内部調査の方法も営業秘密かもわかりませんが。

クアルコムがアップルを北京知的財産法院で提訴

6月、7月及び9月とブログで、アップル(Apple)とクアルコム(Qualcomm)との特許訴訟を取り上げてきました。 今度は、中国でのiPhoneの製造と販売の差止請求を求め、クアルコムがアップルを9月29日に北京知的財産法院で訴えたとのことです。現地時間10月13日付Bloombergが報じています。 https://www.bloomberg.com/news/articles/2017-10-13/qualcomm-seeks-china-iphone-ban-escalating-apple-legal-fight 売上が多い国で特許訴訟することはよくあることなのですが、知的財産制度の導入が新しい中国で米国企業同士が訴訟するなんて想像していませんでした。 アップル製品の売り上げ(iPhone以外の製品も含む)は、米国、欧州、中国及び日本の順番です。中国での売り上げは日本の3倍ぐらいです。売上順位なら、本来は欧州のはずですが、一国の売り上げでは中国が勝るから中国で訴訟したのかもしれません。 記事によりますとクアルコムの特許は、標準必須特許ではない3件の特許のようです。標準規格以外の特許での訴訟となると、これまで米国で互いに訴訟している内容とは異なる主張が飛び交うことになるのでしょうか。 アップルとサムスン電子(Samsung Electronics)との特許訴訟は世界各地で行われましたが、同じような様相を呈してきました。一国当たりの売り上げから考えるとが次は日本でクアルコムがアップルを訴えるかもしれません。

TC Heartland最高裁判決後の米国特許訴訟の裁判管轄

3月24日、5月23日付のブログで、米国特許訴訟の裁判管轄(Venue)を取り上げました。米国最高裁は、フォーラム・ショッピング(forum shopping)を認めず、、「特許侵害訴訟は、被告が法人登録している州の裁判所、または、侵害行為が発生し、さらに、被告が日常的かつ確立された事業拠点を持つ地区(where an act of infringement has occurred and the defendant has are “regular and established place of business”)の裁判所でしか提訴できない」と判示しました。 その後、米国特許訴訟の裁判管轄がどのようになっているか取り上げた記事がありましたので紹介します。現地時間10月13日付のarstechinicaの記事です。 https://arstechnica.com/tech-policy/2017/10/patent-cases-in-east-texas-plunge-more-than-60-percent/ 最高裁判決前の90日間と判決後の90日間の特許訴訟件数を比べています。テキサス州東地区裁判所で特許訴訟は、判決後約60%以上減っているようです。一方、多くの会社が法人登記しているデラウェア州裁判所は、70%増えています。 ハイテク企業が多いカリフォルニア州北部地区裁判所は、判決当時は件数が増えるだろうと予想されていましたが、当初予想したよりもカリフォルニア州北部地区裁判所での特許訴訟は増えていないのかもしれません。

IPRにおける補正されたクレイムの特許性は請求人が証明すべき

現地時間10月4日に、Aqua Products, Inc. v. Matal,(アクアプロダクトv. メイタル)のCAFC(連邦巡回区控訴裁判所)の大合議(En Banc)判決が出たようです。 現地時間10月4日付のIPwatchdogが報じています。 http://www.ipwatchdog.com/2017/10/04/federal-circuit-aqua-products-patentability-burden-amended-claims-petitioner/id=88855/ 特許庁審判部(PTAB)が行う当事者系レビュー(Inter Partes Review:IPR)制度は、当事者対立構造の特許無効手続です。特許権者は、IPRにおいて1回のみクレイムの補正を行うことができます(316条(d))。これまで、補正されたクレイムの特許性については、特許権者がその特許性を証明してきました。 今回のCAFCの大合議判決は、補正されたクレイムの非特許性の証明を請求人が負うという判決です。 316条(e)には、「請求人は、証拠の優越(preponderance of the evidence)に基づき非特許性の主張を証明する義務を負う」と規定されているのですが、補正されたクレイムの特許性又は非特許性の証明を特許権者か請求人のどちらが責任を負うのか明瞭でなかったため、今回の大合議判決で指針が示されたということです。