月別アーカイブ: 2015年3月

数字で見る知財動向

3月30日に特許庁が、特許庁ステータスレポート2015を発表しました。そのレポート中の特許に関する“数字で見る知財動向”からコメントしたいと思います。 https://www.jpo.go.jp/shiryou/toukei/pdf/status2015/06.pdf 日本への特許出願件数は前年比0.7%減の32万5989件になっています。約10年以上特許出願の減少傾向が続いています。 朝日新聞の3月31日の記事によりますと、このように特許出願の減少傾向が続く理由を、最新の技術をあえて特許をとらずに企業秘密にして守る戦略をとる企業が増えており出願の厳選が進んでいる、と特許庁は分析しているようです。 http://www.asahi.com/articles/ASH3Z5TH7H3ZULFA037.html 本当でしょうか。私は、日本の知財制度、日本経済に魅力がないからではないかと思います。 特許に関する“数字で見る知財動向”では、五大特許庁における特許出願件数の推移も掲載されています。そこでは4国では特許出願が増えているにもかかわらず日本だけが出願件数が減少していることがはっきりとわかります(16ページのグラフ)。 日本で特許を取得してもなかなか権利行使できない(無効になる確率が高い等)、特許訴訟しても訴訟の費用対効果が悪い(賠償額が少ない)、日本経済は人口減少で大きく伸びない等で特許を取得しても市場が小さい等の日本特有の問題があると思います。

iPS細胞特許に対して米国特許庁で無効の申し立て

3月30日付けの日本経済新聞に、「訴訟への備え必要に iPS細胞 実用化段階へ」の記事が載っていました。 http://www.nikkei.com/article/DGXLZO85005030Y5A320C1TCJ000/ その記事によりますと、京大は2014年夏に、米国で成立した最初のiPS細胞作製法の特許についてバイオゲートキーパーという会社から当事者系レビュー(IPR:Inter Partes Review)を受けたそうです。 バイオゲートキーパーという会社は、IPRの申立の1週間前に設立された正体不明の会社だったそうです。 IPRとは、米国改正法(AIA: America Invents Act)で施行された制度で、特許を新規性や進歩性違反を理由に特許無効を申し立てる制度です。 IPRの申立人は、 i) 申立人の適格性を明らかにする必要があり、 ii)対象とする各請求項について、請求項の解釈を示す必要があり、 iii) 特許要件を満たさない理由を、具体的に説明する必要があり、 iv) 根拠となる証拠を提出し、さらに根拠となる証拠との関連性を説明する必要があります。 さらに、申立費用が 9,000 ドルで、対象請求項が20を超える場合に、請求項ごとに200 ドルの費用が追加。 更に、審理が開始された場合の費用が 14,000 ドル必要です。 IPRの申し立てのためには、「i) 申立人の適格性を明らかにする必要」があるため、自社名を明かさなければなりません。自社名を明かさないためには、iPSに関するダミー会社をわざわざ会社を作って、そのダミー会社でIPRの申し立てしたのでしょう。 良い特許を持っていたらその特許でできるだけ稼いで、訴訟の準備もしておかなければなりませんね。

J1エンブレムの価値は1億2000万円

J1のヴァンフォーレ甲府のエンブレムは、商標登録4387618です。下記エンブレム(ロゴ)が登録されています。 報知スポーツの3月26日の記事で、ヴァンフォーレ甲府のエンブレムで訴訟がなされていたことを初めて知るとともに、この商標の譲渡も含め、和解金1億2000万円が支出されたことを知りました。 http://www.hochi.co.jp/soccer/national/20150326-OHT1T50137.html なぜ、前身の「甲府サッカークラブ」から、「ヴァンフォーレ甲府」に1999年に営業譲渡される際に、この商標権が共に移転されていなかったかよく分かりません。 商標登録4387618の経過情報を見ますと、2009年から何度も「移転登録済通知書」が提出されています。譲渡契約がうまくいかなかったのでしょうか? それでも、最後の移転登録が2014年2月14日になされ、エンブレムの商標権がヴァンフォーレ甲府に譲渡されています。 1999年のJリーグ昇格から2014年2月まで、商標権の使用ライセンスはどうなっていたのでしょうか?  商標権が1億2000万円が安いのか高いのかは、なかなか専門家でも価値評価できませんね。

LOTネットワーク

マツダが、パテント・トロールによる訴訟に対応する特許連合「License on Transfer Network」(LOTネットワーク)に加盟するニュースを目にしました。マツダのHPで、その内容をリリースしています。 http://www2.mazda.com/ja/publicity/release/2015/201503/150325b.html これまでもパテント・トロールについて何度もブログでコメントしてきました。しかし、私自身、LOTネットワークについてはこれまで全く知りませんでした。 調べますと、LOTネットワークは、会員企業が有する特許を、パテント・トロールに売却した場合(または転々流通してパテントトロールに行き着いた場合)、その特許をもってパテントトロールが他の会員企業に権利行使できないように、特許を他社に譲渡するタイミングで会員企業同士での無償ライセンスすることを目的としています。 LOTネットワークを設立したgoogleとキヤノンが、このスキームを考えたと思いますが、頭のいい人がいるものですね。このスキームは大きなコストをかけずにパテント・トロール対策ができます。 パテント・トロール対策の組織(会社)としてRPX Corporation(RPX社)があります。RPX社は、パテント・トロールが購入しそうな特許を購入し、会員に使用できるようにしています。有力な特許を購入するのですから大きなコストがかかっていると思われます。 いずれにしても、企業はパテント・トロール対策のための準備が大変ですね。

パナソニックがIoT関連特許を無償提供へ

各紙は、パナソニックUSAが3月23日付けに発表した、50件ほどのIoT関連の特許無償開放を報道しています。日本のパナソニックのホームページではその報道内容を見つけることができませんでしたが、パナソニックUSAでそのURLを見つけることができました。 http://www2.panasonic.com/webapp/wcs/stores/servlet/prModelDetail?storeId=11301&catalogId=13251&itemId=720013&modelNo=Content03232015092444644&surfModel=Content03232015092444644 今年1月にインターネット関連の展示会に行きましたら、あらゆるモノをインターネットでつなげる「モノのインターネット(IoT)」が花盛りでした。 この報道ニュースを見たときは、そんなIoT関連の特許を無償開放するなんて、と驚くとともに、テスラモーターズのEV特許の無償開放、トヨタ自動車のFCV特許の無償開放が頭をよぎりました。 パナソニックUSAは、2015年に「OpenDOF(Open Distributed Object Framework)」プロジェクトを設立しており、このプロジェクトを通じてオープンソースコードを管理していくようです。 スマートフォンを使い、インターネットを介して、家の玄関の鍵を開けたりエアコンを付けたり防犯カメラの映像を見たりと、ものとインターネットとが繋がることでいろいろな可能性が広がります。 EVやFCVの特許開放は、ガソリン等の化石燃料車から“できるだけ早く”新たな市場を立ち上げるためと言われています。 パナソニックは、どんな狙いで特許を無償開放するのでしょうか。玄関の鍵、エアコン等の“もの”は今でもあります。これらがインターネットと繋がる市場を早く立ち上げるためでしょうか。 また、パナソニックがパテントプール等ではなく、特許開放の途を選んだのかも知りたいです。