月別アーカイブ: 2013年7月

知的財産の価値評価

知的財産権は、土地などと同様な財産権ですから、売ったり買ったりすることも可能です。売買する際には価値評価が重要です。知的財産権の価値評価が必要な場面は、ライセンス、M&A、事業提携、資金調達等の際に必要です。価値評価と言っても、定性的な評価もあれば、点数による相対評価もあれば、金銭的な定量評価もあります。 特許権に話を絞っても、流通市場が確立していないため、その特許権の価値は簡単に決めることができません。特許権の利用者によって価値が変わります。 特許権の価値評価の難しいところの一つとして、特許権の権利範囲をどのように解釈するか、又は特許権が無効にならないか等も解釈しなければなりません。このような観点は弁理士業の一環として、作業できる範囲です。一方、特許権の市場性も見極めなくてはいけません。これは私の苦手分野です。 ベンチャー企業の経営者とお会いした際に、”特許権の価値評価をしていただき、それで銀行から融資を○○百万円受けることができた。”との成功事例を聞きました。その経営者は特許権で融資を受けることができたことで本当に感謝していました。このようなサポートをするためにも、知的財産の価値評価を勉強して行きたいと思います。

シフト補正の緩和(2)

 平成19年4月1日以降の特許出願に関しては、特許請求の範囲の補正に厳しい制限がありました。その審査基準では、審査官が請求項1、請求項2……と順に審査して、公知例と比較して”特別な技術的特徴”を発見した場合に、”特別な技術的特徴”を含むような補正をしなくてはなりませんでした。例えば、請求項4で”特別な技術的特徴”を発見した場合には、請求項4の内容を含む補正しかできませんでした。  この運用は、各国の特許法とも比べて奇異な制度であるため、米国の特許弁護士など海外の弁理士・弁護士に説明することは大変困難でした。この制度は日本特有であるため、海外の弁理士・弁護士等は、簡単には理解できないのです。そして、厳しすぎる運用に対して分割出願などで対応しなければならず、費用がかかりました。  その制度も、審査基準が7月1日に変わったため、海外の特許出願の補正とほぼ同様の補正ができるようになりました。これまで大変であった海外の弁理士・弁護士への説明が不要になるでしょう。

職務発明制度に関する調査研究委員会(1)

7月4日のブログで、職務発明制度に関する調査研究委員会が活動することに関してコメントしました。 その7月4日の第1回議事概要が掲載されています。 http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/rireki/what.htm 概要だけでは、正確にはわかりませんが、発明の法人帰属を推進するような発言もあれば、法人帰属ありきの議論はすべきでないとの発言もあるようです。日本の実体経済の上昇のためにはイノベーションが重要であり、職務発明という利益を発明者に分配というよりは、イノベーションによって利益を拡大するために、どういう制度が望ましいかという観点から新職務発明を検討すべきとの発言もあるようです。 新職務発明制度の改正だけで、日本経済が発展していくことはないでしょうが、外国から、”第3の矢”として日本経済が成長するだろうと感じさせることができるのは、大きな制度改革です。例えば、知的財産高等裁判所も、東京高裁の一部門よりも世界にアピールしやすい理由から、作られた側面もあります。こう考えると、職務発明は法人帰属になるのでしょうか。

産業革新機構のファンド(1)

NHKのニュースによりますと、官民でつくるファンドの「産業革新機構」は、活用されなくなった特許を企業から買い取り、ベンチャー企業などに安く提供するファンドを新たに設立することになったそうです。 大手企業が有する特許のうち半分近くは、企業が事業を縮小したり撤退したりして十分に活用されていません。そこで、産業革新機構が中心となって出資し、当初は電子機器関連の特許を中心に買い取りを進めて、ベンチャー企業などに権利のライセンス料(使用料)を安くして提供すると報道しています。さらに、民間企業から出資を集めて規模を拡大したうえで、関連する別の特許と組み合わせることで使い勝手を高めるとのことです。 さて、うまくいくでしょうか。安いライセンス料は魅力的ですが、特許は権利書であって技術説明書ではありません。同業の競業会社であれば、製品に関連するノウハウ等もあるため、その特許を使って新商品を開発できますが、同業以外はなかなか特許だけでは新製品ができないと思います。縮小する部門まるごと(人とともに特許権)を売れば、新商品は開発できますが。 さて、7月8日のブログで日本経済新聞に掲載された”大手の特許を使い進化”を取り上げました。今回も、安いライセンス料だけでなく、どの大手企業の特許を使って製造した等のアピールができるようにすることも必要ではないでしょうか。

税関における輸入差止

 税関が、海外からの侵害品(模倣品・海賊版)の国内流入を食い止めてくれます。では、税関で模倣品を食い止めてもらうためには、どのようなことが必要になるのでしょうか?  まずは、国内において知的財産権を確保する必要があります。この知的財産権には、特許権・実用新案権、意匠権、商標権だけでなく、著作権、著作隣接権、回路配置利用権、又は不正競争防止法に基づく権利も含まれます。  取得した知的財産権に基づき、税関にて模倣品の輸入差止をしてもらうための申請手続きをします。  この申立が通った後、申立てられた侵害品が実際に輸入申告されたのを税関が発見した場合には、税関は認定手続を開始します。認定手続とは、税関が、輸入申告された貨物や国際郵便物が知的財産権を侵害する物品ではないかとの疑いを持った場合に、それが知的財産権を侵害するものと言えるかどうかを認定するための手続です。ここで侵害品と認定されると、税関は、その侵害品を没収又は廃棄等します。  税関で侵害品として、没収又は廃棄等されるものは、海賊版CDや偽ブランドを付けたバッグ等です。特許権の侵害品の案件は少ないです。  特許権の侵害品は、見た目だけでは正規品・侵害品と分からない場合が多いです。このため、税関で認定手続きを容易にしてもらうためにも、製品の型番や侵害品のパッケージの特徴など、正規品と侵害品とを区別する方法を税関職員に伝えることも大変重要になります。