月別アーカイブ: 2013年5月

アンジェリーナ・ジョリーとミリアド特許

大女優のアンジェリーナ・ジョリーは、5月14日に、米紙ニューヨーク・タイムズに寄稿し、遺伝性のがんを予防するために両乳腺切除手術を受けたことを発表しました。アンジェリーナ・ジョリーは、現在健康であるものの「BRCA1」と呼ばれる癌遺伝子があると診断されたため、両乳腺切除手術をしたとのことです。 日本のマスコミでも大きく取り上げられましたので、現在、日本で費用30万円で保険適用外であっても検査希望者が急増中との報道もあります。米国でも検査費用はUS$3,000-4,000なので日本とあまり変わりません。 でもどうして、こんなに費用がかかるるのと疑念を抱く人もいるかもしれませんが、Myriad Genetics, Inc 社(以下、ミリアド社)が特許権を有しており、高いライセンス料を要求していることが原因の一つです。ミリアド社は、単離されたBRCA1遺伝子の特許(U.S. Patent 5,747,282)や、BRCA1遺伝子変異を比較する検査方法の特許(U.S. Patent 5,709,999)、BRCA1遺伝子を用いたスクリーニング方法の特許(U.S. Patent 5,747,282)を有しています。 多くの人に安価で検査を受けることができるように、複数の団体がミリアド社の特許に対して特許無効で争っています。そして現在2度目の最高裁判決が6月中に出る予定です。  ※2011年7月   CAFC(連邦控訴裁判所:日本の知財高裁に相当)は、上記①単離された遺伝子の特許及び上記③スクリーニング方法の特許に関しては、特許適格性を認める判決をしました。  ※2012年3月   連邦最高裁は、別事件である最高裁のPrometheus判決を考慮し、Myriad判決を再審理するようCAFCに差し戻しました。  ※2012年8月   差し戻し審のCAFCは、結論を変えない判決をしました。  連邦最高裁の2度目の判決がどのような結果になるかは、バイオ関連会社や特許関係者の注目の的です。しかし、アンジェリーナ・ジョリーの手術発表から間もないので、日本でもバイオ・特許業界だけでなく、マスコミが大きく報道するでしょう。

中小企業の特許出願件数と海外出願件数

5月28日に、2012年の出願件数などのブログを載せました。特許庁の広報誌「とっきょ」平成25年6・7月号に2007年から2011年までの中小企業の特許出願件数が掲載されています(下記表)。特許出願件数が減っている中で、グローバル化に対応すべく、徐々に外国特許出願を増やしていることがうかがえます。 特許庁は、特許庁から中小企業支援センターへ補助金を交付しており、中小企業は、支援センターを介して、外国出願した際にかかった費用の半額(1/2)の補助金を受けることができます。1特許出願の上限額は150万円です。意匠登録出願及び商標登録出願の場合には60万円です。台湾に商品を売りたい、中国で商品を生産したい場合など、自社の知的財産を保護する必要がありますが、補助金を受けることができるメリットを享受しましょう。

皮膚の培養方法

特許法の条文だけではあいまいな部分が多いので、特許庁審査官は、特許出願を審査する際に、審査基準に沿って審査するようにしています。特許の審査基準は何度も改正されており、「産業上利用することができる発明」(特許法第29条柱書)に関してもこれまで何度も改正されています。最近では、「産業上利用することができる発明」の審査基準も2012年7月に改正されています。 細胞シート再生医療事業を行っている株式会社セルシードが、そのホームページで、2007年に特許出願した”上皮系細胞の培養方法”の発明が特許になったと5月28日に発表しています。請求項1の特許は、密閉系細胞培養容器中で、温度、酸素分圧及びpHをどの範囲にするかを規定しています。 古い審査基準(手元に古い審査基準がないため年月が特定できません)ですと、人間から採取したもの(例えば、尿、皮膚、髪の毛、細胞等)を処理する方法は特許になりませんでした。理由は人間から採取したものを処理する発明は、「産業上利用することができる発明」に該当しなかったからです。その後、皮膚などの再生医療の産業が知的財産で保護できないため、審査基準が変わりました。 株式会社セルシードは、特許を取得できたことで、ライセンス収入が増えたりするのでしょうね。29日の株価は急上昇です。

2012年の特許等の出願件数

特許業界にいますと、特許、実用新案登録、意匠登録及び商標登録の出願の件数は気になるところです。5月12日に、特許庁から2012年の出願件数及び登録件数が公表されました。過去10年分も掲載されています。 http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/rireki/what.htm 出願件数を見ますと、10年間で初めて、特許、実用新案登録、意匠登録及び商標登録の出願件数が前年比で増加しています。また、2006年から連続して前年割れが続いていた特許出願の件数がわずかですが増加しました。 具体的には、特許出願342,796件(前年比100.1%) 実用新案登録出願8,112件(101.6%) 意匠登録出願32,391件(105.1%) 商標登録出願119,010件(110.1%)です。 特に2006年から連続して前年割れが続いていた特許出願の現象がストップしたことは喜ばしい限りです。どうして2012年に全体的に出願が増えたのかよくわかりませんが、一般に、日本市場や日本国内製造の拡大を考えて、特許等の出願をします。このため、日本経済の十数年のデフレから脱却していると考えている企業等が多くなってきている兆しかもしれません。

知財の獲得が自社調達に偏る(IPデューデリジェンス)

5月27日の日本経済新聞の記事に、知的財産権研究所(特許庁の外郭団体)が行った調査結果を載せています。その記事では、知的財産の調達が自社の特許出願等によっており、戦略的に知的財産を目的としたM&Aが日本企業は欧米企業と比べ少ないことを指摘しています。 戦略的に知的財産を目的としたM&Aは、GoogleがMotorola Mobileを2012年5月に買収したことが有名です。「モトローラが保有する特許の獲得」のため、M&Aしています。歴史の浅いGoogleは、知的財産では弱い立場にあったため、MicrosoftやAppleなどと特許で戦える立場になるために、経営の傾いていたMotorola Mobileを買収しました。 私は、外国企業からの依頼で、IPデューデリジェンス(Intellectual Property Due diligence; 以下IPデューデリ)をしたことがあります。デューディリジェンス(Due diligence)とは、投資やM&Aなどの取引に際して行われる、対象企業や不動産・金融商品などの資産の調査です。IPデューデリは、資産の調査が終わった後に、知的財産の評価・調査をすることです。買収先が技術が高くても、他社特許を侵害しているようでは、買収完了後にリスクを抱え込むことになります。IPデューデリは、そのようなリスクを見出すことができます。 私の場合は、戦略的に知的財産を目的としたM&Aでの特許調査ではありませんでしたが、日本企業が戦略的に知的財産を目的としたM&Aを活用し始めれば、私も近い将来経験できるかもしれません。