欧州と日本のコンピュータ関連発明 その2

前回(その1)は、コンピュータ関連発明(”computer-implemented inventions” (CII))に関して、欧州の審査ガイドライン3.9.1を説明しました。
今回は、3.7.1“ユーザインターフェース”について説明します。2017年11月版の改訂審査ガイドラインで改正された内容です。
日本では、ユーザがユーザインターフェースを使いやすくなるなら、構成が異なり進歩性があると判断されるケースもあると思いますが、欧州の審査基準では特許にならない場合もあるようです。

https://www.epo.org/law-practice/legal-texts/html/guidelines/e/g_ii_3_7_1.htm

この審査基準で特に具体的に記載されていた例を以下に挙げます(技術的貢献があると進歩性がある意味です)。
・審美的な考慮、主観的なユーザの好みまたは管理の規則によって決定されるメニューのグラフィックデザイン(例えば、見た感じ)に関する特徴は、メニューベースのユーザインターフェースの技術的特徴に寄与しない。
・印刷処理を開始し、文書アイコンをドラッグしてプリンタアイコン上に往復動させることによって印刷される印刷部数を設定するなど、異なる処理条件をユーザが直接設定できる代替のグラフィカルショートカットをGUIに設けることは、 技術的貢献である。
・一方、この作業中にユーザの精神的意思決定プロセスのみを容易にする情報を提供することによってユーザ入力をサポートすること(例えば、ユーザが何を入力したいかを決定することを支援する)は、技術的貢献とはならない。
・ジェスチャーやキーストロークなど、主観的なユーザの好み、慣行又はゲームルールを反映し、物理的な人間工学的利点が客観的に確立できない入力を提供する方法は、技術的な貢献とはならない。 ただし、ジェスチャーの認識を高速または正確に行うことや、認識を実行する際にデバイスの処理負荷を軽減するなど、入力の検出に対するパフォーマンス指向の改善は、技術的貢献になる。

欧州と日本のコンピュータ関連発明 その1

コンピュータ関連発明(”computer-implemented inventions” (CII))について特許出願業務をしていると、欧州の特許性に関して違いを感じることが多々あります。
日本のコンピュータ関連発明出願を基準に考えてしまいがちですが、日本で特許にできても欧州で特許にできないことも多いので、まとめていきたいと思います。

コンピュータ関連発明では、新セクション(F-IV, 3.9)が追加されています。その3.9.1 Cases where all method steps can be fully implemented by generic data processing meansを簡単にまとめます。
https://www.epo.org/law-practice/legal-texts/html/guidelines/e/f_iv_3_9_1.htm

3.9.1のタイトルを直訳しますと、「一般的なデータ処理手段によって、全ての方法ステップが完全に実施できる場合」という意味です。これは、いわゆるパソコン・スマートフォン等の一般的なデータ処理手段ですべての方法ステップが完結する発明です。意訳しますと「コンピュータのみで、全ての方法ステップが完全に実施できる場合」となります。3.9.2は機会があれば説明しますが、センサーやアクチュエータを伴う方法ステップを説明しています。

さて、この3.9.1セクションは、コンピュータ関連発明において、典型的に受入れ可能なクレイム構成を成文化するものです。以下のようなクレイムの記載が欧州では認められていることになります。日本特許出願の請求項(クレイム)の記載の実務と差異はありません。

<クレイム1:方法> 
 コンピュータにより実行される方法であって、ステップA、B、...を含む。
<クレイム2:装置/デバイス/システム>
 クレイム1の方法を実行する手段を備えるデータ処理装置/デバイス/システム。
 ステップAを実行するための手段、ステップBを実行するための手段、...を含むデータ処理装置
<クレイム3:プログラム>
 コンピュータによる実行時、クレイム1の方法をコンピュータに実行させる指示を備えるコンピュータプログラム。
 プログラムがコンピュータによって実行されると、コンピュータにステップA、B、...を実行させる命令を含むコンピュータプログラム
<クレイム4:コンピュータ読出可能媒体>
 コンピュータによる実行時、クレイム1の方法をコンピュータに実行させる指示を備えるコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
 コンピュータによって実行されると、コンピュータにステップA、B、...を実行させる命令を含むコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。

スマホで自動車の鍵の解錠やエンジンの起動

自動車の電子キーには、Aタイプ(ドアに近づくと自動で解錠、離れると自動で施錠されるタイプ)とBタイプ(ドアに近づき、ドアノブやドアのボタン、センサーに触れることで解錠・施錠するタイプ)とがあります。現時点ではBタイプの電子キーが主流のようですが、将来はスマートフォン(スマホ)に取って変わられるのでしょうか。
さて、PatentlyAppleのサイトに、8月16日に公開された米国公開特許2018―
0234797が掲載されていました。記事タイトルは、「自動車パッシブエントリーシステムをアップルが特許出願」というものです。

http://www.patentlyapple.com/patently-apple/2018/08/apple-invents-an-enhanced-automotive-passive-entry-system-without-mentioning-autonomous-vehicles-once.html

単なるスマホアプリで自動車の鍵の解錠施錠をする発明ではなく、無線通信や近接場通信(NFC)を使って、エンジンの起動、冷暖房の起動等も行うようにする発明のようです。
この発明の背景には、たぶんCar Connectivity Consortium(CCC)の技術規格があると思われます。
CCCは車のキーの代わりにスマートフォンを使うルールやプロセスを標準化することを目指しているコンソーシアムです。世界の自走車メーカーのうち70パーセント程が参画しており、またアップルやパナソニック等の通信メーカーも参画しているようです。
カーシェアが普及している今、電子キーからスマホへの移行は、遠い話でないような気がします。

クアルコム、台湾独禁当局と和解

米クワルコムは、いろいろな国から独占禁止法違反で提起されていました。また現在も韓国当局とEU当局とは未だ結論がでていません。通常は課徴金が課せられて、米クワルコムは課徴金を支払っているのではないかと思います。
さて、日本経済新聞の現地時間8月10日の記事で、“クアルコム、台湾独禁当局と和解 見返りに770億円”という記事がありました。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO34045120Q8A810C1EA6000/

台湾当局は、課徴金を1/9に減額し、その見返りとしてクアルコムは通信向け半導体の研究開発拠点の建設など台湾で7億ドルを投資するというものです。
こんな和解の仕方もあるのですね。どちらが、この案を提案したかわかりませんが、台湾経済もクワルコムもともにメリットがあるWin-Winの和解ではないでしょうか。
未だ争っている韓国当局やEU当局もこんな和解を狙ったらよいのではないでしょうか?

オープン&クローズ戦略を考える

日本経済新聞では7月25日から、「やさしい経済学」のコラムで、筑波大学立本教授の“オープン&クローズ戦略を考える”が掲載されています。
「やさしい経済学」とは名ばかりで難しくて内容が理解できないことも多いのですが、今回は、知的財産関連の話であるので、難なく読めています。
さて、Wired Businessの現地時間7月31日の記事で、“オープン戦略を掲げているにもかかわらず、企業は人工知能(AI)テクノロジーの特許出願を増やしている”という記事がありました。
https://www.wired.com/story/despite-pledging-openness-companies-rush-to-patent-ai-tech/

記事では、Google(グーグル)と同様にFacebook(フェイスブック)、Amazon(アマゾン)、Microsoft(マイクロソフト)は、自分のエンジニアがオープンソースとして機械学習に使うソフトウェアをリリースしており、秘密主義のアップルを含むすべてが、AI研究者に最新のアイデアを公開して、これら企業が優れた教員や大学院生を募集できるよう支援している。それにもかかわらずAI技術とアプリケーションの所有権を主張するよう努力している、と記載されています。
 ニューラルネットワークに言及している機械学習技術である特許出願は、2010年の94件から2016年に485件に上昇しているそうです。

企業としては、オープン戦略をとっていても、AIの特許権を主張してくる会社がいた場合には対抗措置としてAI特許を有していないと戦えない場合もありますから、保険の意味も兼ねて特許出願しなくてはならないと思います。

Apple Watchで日焼けを防ぐ

関東地方は本日やっと酷暑からの逃れれるようですが、関西以西はまだまだ酷暑が続くようですね。こんな天気が続く中、熱中症対策が一番ですが、日焼け対策も重要です。
「Apple Watchで日焼けを防ぐ」というTACHABLEの記事を見つけました。

腕時計をしている、腕時計の日焼けしていない跡が残りますが、その跡が無くなる発明かと思いきや、Apple Watchに日焼け検出器の追加機能を増やす発明が開示されたようです。
https://techable.jp/archives/80484

記事では7月19日に特許が登録されたと記載していますが、厳密には誤りで公開公報が発行されただけでした。
その米国公開公報2018/0202927号によりますと、紫外線と赤外線の検出器“UV-IR分光器”をモバイルデバイス(Apple Watchとは記載していない)に組み込み、“UV-IR分光器”から腕などの皮膚に紫外線/赤外線を照射して皮膚からの反射光を受信する。そして日焼けの危険にさらされている領域を画面に表示するというものです。

アップルには、今度は熱中症になる可能性を示すことができる発明を提案してほしいです。今年はすでに数万人が病院に搬送され、熱中症による死者が1000人を超えると危惧されているのですから。

商標権侵害で、エーゲルがアサヒ飲料に3300万円の損害賠償

読売オンラインの記事で、「「TEA COFFEEは商標権侵害」を見つけました。
https://www.yomiuri.co.jp/national/20180720-OYT1T50016.html
食品会社「エーゲル」は、2016年6月からコーヒーに宇治茶を加えた「TeaCoffee」の販売を開始しており、「TeaCoffee」が全国の「東急ハンズ」などで売られているそうです。
エーゲル登録商標(登録5963932)は、2016年12月に商標登録出願され、以下のロゴ商標で登録されています。

記事によりますと、アサヒ飲料は、ほうじ茶入りカフェラテ及び煎茶入りコーヒーを販売しているそうです。調査してみますと、訴えられたアサヒ飲料は2017年12月に商標登録出願しており以下のロゴ商標が出願中です(商願2017-160294)で登録されています。なお、商品にも下記ロゴが使われています。

エーゲルは「消費者から『アサヒ飲料のまねをしている』と誤解される。」と言われているそうですが、私にはアサヒ飲料の「商品の原材料を示す表示にすぎず、商標権は侵害していない」との答弁書(反論書)の方に勝機があるかなと考えます。
“お茶”が入った“コーヒー”飲料ですから、“Tea”と“Coffee”は原材料が記載されたものです。このため、特許庁は、波と島とカモメが合わさったロゴに注目して商標登録を認めたのではないかと思います。
特許庁のデータでは、アサヒ飲料の商標登録出願は未だ審査着手されていませんが、アサヒ飲料の商標登録出願も登録されるのではないでしょうか? 葉っぱとコーヒー豆のロゴで、エーゲル登録商標(登録5963932)と区別できるからです。
エーゲルがどのような理由で商標権侵害を主張しているかわかりませんが、単純に「TeaCoffee」文字だけの登録商標ではないので、大阪地裁も権利侵害を認めないのではないかと考えます。

カップヌードルの位置の商標

最近はカップラーメンを食べることがほとんどなくなりました。しかし、地震などの災害時のために、数個のカップラーメンを常備しています。
さて、読売オンラインの記事で“カップヌードルの帯、位置商標登録”の記事を見つけました。
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20180703-OYT1T50029.html

位置の商標とは、平成27年4月から商標登録出願を受け付けることになった、新しいタイプの商標です。図形等の標章とその付される位置によって構成される商標です。この説明だけではわかりにくいかもしれませんが、以下に登録商標を載せます。

どこの商品かわかるでしょうか? 左側はキユーピー株式会社のマヨネーズ。右側は株式会社エドウインのジーパンです。
ある模様等をいつも同じ位置に付けていると、他の商品と区別がつくようになり出所がわかるようになります。このような商標が位置の商標です。
さて、カップヌードルの帯はの長く使って 新たなC・ロナルドがテレビで、鍛えられた肉体に「シックスパッド」を貼っているCMをよく見ます。「シックスパッド」を腹や腕に貼って電気刺激で筋肉を鍛え上げることができるとのことです。
さて、カップヌードルは約2年前、世界で400億個を売ったと発表していました。記事によりますと、50年間この帯の模様を使ってきたそうです。洋皿の模様をモチーフしたものだそうですが、今ではカップラーメンの模様として世界中で認知されるのですね。

模倣品対策

FIFAワールドカップロシア大会は、日本の活躍等で盛り上がっています。ポルトガルのエース、C・ロナウドはゴールを量産中です。
さて、朝日デジタルの記事で“偽シックスパッド、見抜けるか”の記事を見つけました。
https://www.asahi.com/articles/ASL6P45S2L6POIPE00H.html?iref=pc_ss_date

C・ロナルドがテレビで、鍛えられた肉体に「シックスパッド」を貼っているCMをよく見ます。「シックスパッド」を腹や腕に貼って電気刺激で筋肉を鍛え上げることができるとのことです。
さて、100万台超を売り上げる大人気の「シックスパッド」は、10分の1の価格で売られている模倣品出ているそうです。
日本の税関での「シックスパッド」品の輸入差し止め点数は、2017年、前年の2・7倍の1万3千点に上ったそうです。
税関をすり抜けたり日本で製造されていたりした「偽のシックスパッド」は、スタッフが、オークションやフリマサイトを監視して削除されなければなりません。費用対効果ということでなく、費用が掛かっても「偽のシックスパッド」を完全に駆逐するようにしないと、「シックスパッド」のブランドが棄損していきます。
今回の記事で初めて知ったことがあります。偽物を見抜くサービスが登場しているのですね。一般消費者が偽物を誤って買わないようにすること、安いからと言って偽物とわかって買う一般消費者が居なくなることが、模倣品を駆逐する一番の方法ですね。

TRINUS

たまたま、森永製菓のベイクド技術のチョコレート菓子を見ていたら、TRINUSというサイトを見つけました。
https://trinus.jp/

Driving Chemical Reactions(技術とデザインの化学反応による驚きを)というコンセプトで、デザインを投稿したりできるサイトです。
昨年まで東洋大学のライフデザイン学科で知的財産を教えていました。学生の卒業作品集を見る機会がありましたが、商品化したら売れるのではと感じたものがありました。
デザインが良ければ売れる可能性が高まりますが、そのデザインに機能・性能が加われば、もっと売れる可能性が高まります。
デザイン設計をしていた学生を見てきたからか、このサイトを広めたいと感じました。ホームぺージにはありませんでしたが、製品保護のために意匠登録出願などの法的なサポートもしているのでしょうか。